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ディオはザ・ワールドを発動した瞬間に自滅する[後編]2008-12-31


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普段の生活の中ではまず意識する事はないと思いますが、私たちは空気と呼ばれる混合気体に囲まれて生活しています。
この気体はミクロに見れば様々な分子や原子が超高速で飛び交う非常にエキサイティングな世界です。これらの分子や原子1つ1つも、時の止まった世界では運動量がゼロになっていると考えなければなりません。

そうするととても奇妙な事が起こります。
空気中を飛び交う分子や原子が止まってしまっているため、あなたが一歩足を踏み出すと、それまであなたがいた地点は真空になります。存在を感じないほど柔らかい、空気という名のジェルをかき分けて進むイメージです。
あなたの進む先と進路の両脇には圧縮された空気の層ができ、あなたの通った道は全て真空です。

これでは一度通ったルートをもう一度通るのは自殺行為ですね。空気が無くては窒息死してしまいます。
事前の計画で考えなければならない事が増えました。進入ルートと脱出ルートがかぶらないように考えないといけませんね。
また、引き手のドアは難関です。ドアを開けた時点でそこが真空になってしまうので、息を止めながら通過しましょう。

そもそも時の止まった世界で呼吸はスムーズにできるでしょうか?
いまあなたが何気なく吸い込んだ空気は、肺の容積を大きくする事で肺の中の気圧が下がり、それによって空気が肺の中まで運ばれていっています。気圧とは気体分子が持っている運動量の事なので、運動量の無い世界では当然気圧も発生しません。

気圧がないとなると、呼吸方法は大変限られたものになります。空気は柔らかいジェルという例えをしましたが、絶えずそのジェルにかじりついた上で、おかゆでも飲み込むように、喉の筋肉を使って空気を飲み込み続けなければなりません。
しかも一度かじりついた空気の部分は真空のままなので、移動しながらかじりつく必要があります。

さて、気圧の事を考えるならば同様に液体の圧力、水圧についても考えなければなりません。水圧についても気圧と同様のメカニズムで全く発生しないと考えられます。

言わずもがな、人間の血液は液体なわけですが、心臓から全身に血液を巡らせるためにも、水圧の力が重要になります。心臓から送り出された際の力は、血液中を水圧によって伝播する事で再び心臓まで戻ってくるようになっています。
もしも水圧が無かったとするならば、心臓の近くで赤血球があっという間に詰まって血栓になり、血液が流れなくなって死んでしまうでしょう。

時が止まった瞬間、目の前は闇になり、驚くまもなく血流が止まり、脳への酸素の供給が途絶え、意識が遠のいていく…。
なんと言う事でしょう、せっかく時間が止まってもすぐに死んでしまうとは。あんな事はもとより、こんな事を実現する事も出来なさそうです…。

いや!ちょっと待って下さい。

時間の止まった世界を運動量が見かけ上ゼロになる世界としましたが、そういえば、その世界の中で動ける「あなた」とは、どの範囲の物質であるかを定義していませんでした。
あなたの体内については、「あなた」の範囲として時が動いているというルールにしましょう。「あなた」という存在だけが時の止まった世界の中で動けるという話で言えば、このルールは妥当な範囲です。

このルールは素晴らしいですね。血流の問題は無くなり、気圧の問題も半分は解決です。いったんかじった空気は圧力を取り戻すので、呼吸もだいぶ楽になるでしょう。良かったです。少しまた希望が出てきました。
例え大気圧が全くなかったとしても、体内では気圧も水圧も通常通りなので生命維持には問題なさそうです。

例え大気圧が全くなかったとしても、問題なさそう、…ですか?

本来、人体の各所には 1 平方メートルあたり約 10kg にもなる大気圧がかかっており、人体はその大気圧に耐えるために外側に向けての圧力をあらかじめ持っています。
高山に上った時に気圧が数パーセント低くなるだけで、顔がむくんだようになるのはそのせいです。

その大気圧が突然全く無くなったら、いったいどうなるでしょうか?
まず 人体の中で外気に接していてもっとも弱い部分、つまり眼球が飛び出し始めたかと思うと、次の瞬間には、まるで水風船が破裂するかのように、四方八方にその身を飛び散らせてしまうでしょう。

もしあなたが時を止める能力を手に入れても、決してその力を使わない事をお勧めします。

※ちなみに、破裂のくだりはフィクションです。例え破裂しなかったところで、生命維持は難しいでしょうけれども…。正しい知識 → 「真空 破裂 - Google 検索

カテゴリ: Science タグ: jojo dio