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Web 系エンジニアの今後 10 年のための生存戦略2012-05-07


さる 4 月 20 日に、3 年半お世話になった Web 系受託開発の会社を退職しました。
大学を卒業して 11 年。3度目の転職で、就業人生の第 2 ステージを新しい職場で 5 月からスタートしました。

所属としては 4 社目なのに、なぜ第 2 ステージなのか。その辺りの説明も含めて、Web 系エンジニアを自称する自分が、この先生きのこるために考えた生存戦略をまとめてみたいと思います。

IT 企業と非 IT 企業


これまでの 11 年間はずっと、いわゆる IT 企業に務めていました。IT を専業とし、非 IT 企業を顧客として IT の技術を提供する企業です。当然、ビジネスの大半は B2B になります。
一部 B2C のビジネスを手がけたり、より自分の志向にあった企業へと所属を変えてきたという遍歴はありますが、ベースの部分では変わりありません。

ですが、IT を専業とする業界は、いま曲がり角に来ていると考えています。
もちろん、いまやどんな産業とも切り離せなくなった IT という技術自体は、今後もずっと必要であり続けるでしょう。
ただ、特に自分の得意とする Web 分野では、仕事のある場所が IT 企業から非 IT 企業に移っていくのではないでしょうか。

IT はその進歩の過程でコモディティ化が進み、ずいぶん安く、簡単になりました。今後、いわゆるデジタルネイティブが増え続ける事も見逃せません。
誰でも気軽に IT を使いこなす未来が訪れた時、そのユーザが直接触れるソフトウェアは、ニーズを理解し、早いスピード感で動けるサービス提供者自身が作るのが理にかなっています。

IT のコモディティ化は、事業会社自身が IT サービスをフルスクラッチでデザイン出来る未来を導くと考えています。
そうなった時、IT 専業の企業がどれほど必要とされるでしょうか?

IT 専業の企業で働くということ


IT 専業で生き残れるのは、概ね次の 3 パターンではないかと思われます。

  1. 圧倒的な低価格でシステムを開発できるような企業
  2. 他に代替できない極めて高い技術を持ってるような企業
  3. 自社の IT サービスを自社で提供しているような企業

「1. 圧倒的な低価格でシステムを開発できるような企業」は言わずもがな、日本に存在するなら超ブラック企業です。決して向かいたくはない道です。しかも当面の間は何だかんだ生き残ってしまうのではないかと思いますが、そのブラック企業すら、海外から攻めこまれて最終的には撃沈していくと思えるのが今後の日本です。

「2. 他に代替できない極めて高い技術を持ってるような企業」はエンジニアとしての高みです。目指せるものなら目指したい領域ですね。
自分自身、「現代の」日本の Web 系エンジニアとしては、技術力で全国平均を上回っているだろうという自信もありますし、「現代の」Web 系 IT 企業内においては、十分な価値を提供できるだろうという自負もあります。

ただ悲しいかな、本当の一線で活躍されているような方々に追いつけることは無いだろうなと。Web サービスの脆弱性をついたエクスプロイトコードをどんどん公開しているような人や、自ら言語を設計して世界に広めてしまうような人との間には越えられない壁があるなと。そう思ってしまいます。

それでもしがみついて「技術だけ」で食っていこうとするのも一つの道です。自分自身の矜持にかけてそういう選択をする人もいるでしょう。
ですが生存戦略としては分が悪いです。今ある技術力に何を組み合わせて自分の強みとしていくのか。そう考えていくのが生存戦略の王道です。

「3. 自社の IT サービスを自社で提供しているような企業」は概ね妥当な道に思えます。国内大手という意味では、楽天・GREE・DeNA・mixi・サイバーエージェント・ドワンゴ辺りが該当するでしょうか。他にも中小・ベンチャーなどを数え上げたらかなりの数の企業が存在します。こういった環境を望む人にはこの上ない環境かもしれません。実際に自分もそういったベンチャー企業に所属していたことがあります。

IT 専業でサービスを展開する場合、当たりはずれが大きいのが特徴です。すでに成功している大手に入れば、大きくはずれることはなく、当面の身分は保証されるかも知れませんが、本当のトップレベルの実力がないと、エキサイティングな仕事は回ってこないと思いませんか?

一方、駆け出しのスタートアップに参加するのは面白いです。自身の実力に応じて責任もどんどん増えますし、自身の成長速度も早いです。しかしそれこそ大博打です。当たれば大儲け、はずれれば無職。この記事のテーマ「生存戦略」を考えれば、残念ながら最適解ではありません。

はずれを見越して、有望そうな IT ベンチャーを当たりが出るまで渡り歩く、とか、すでに成功してこの世の春を満喫中の IT 企業を渡り歩く、なども選択肢の一つですが、凡庸なエンジニアは加齢とともに転職が難しくなる現実を忘れてはいけません。
何も、技術力が先細りしていくといっているのではないんです。そんなのは本人次第です。プログラマ 35 歳限界説とかクソ食らえです。

ただ、そう思っている人は他にもいるんです。下からどんどん上がってくるわけです。同等程度優秀なエンジニアを比べた場合、年齢が若いほうが有利というのは揺るがない真実だと思います。
「技術だけ」で勝負をしていく限り、逃れられない現実です。

非 IT 企業の強みと展望


IT 自体は広がり続けるのに IT 業界は縮み続ける。そんな未来を想定し、まだ十分に IT 業界が大きく、自信の技術力が評価されているうちに非 IT 企業へと転身することにしました。ゆえにこれが、自分にとって就業人生の第 2 ステージになるのです。

当たり前ですが、非 IT 企業の強みは、元々 IT 以外での収益がある点です。
IT それ自体で収益を上げる事よりも、いかに本業の収益を IT で伸ばすことが出来るか、というのが焦点になります。
もちろん現状ですでに、IT を導入し活用している企業がほとんどだと思いますが、IT 関連については外に丸投げという企業も多いでしょう。

そうではないと。本業のことを一番良く知る自分たちで、IT サービスを作っていくのだと。そうでなければ、IT の力を十分に発揮することができないのだと。そう気づいた企業が、今後 10 年を勝ち残っていく企業なのだと思います。

そういった企業で求められるエンジニア像は、決して「技術だけ」のエンジニアではありません。
「技術だけ」ではなく、それにアイディアを掛け合わせて自らが新しいサービスを創りだしていけるようなエンジニアが求められていますし、そうなっていきたいと考えています。それこそが、非 IT 系 Web 時代の生存戦略です。

今まさに、大きなパラダイム変換が進行しています。これは、来るべき次の 10 年に向けて、自分が変わり成長して行くための第一歩だと考えています。

(おまけ) Web 系エンジニアの転職とポートフォリオ


3 年半前の転職時、将来の転職を見越した自分自身の技術のポートフォリオとして、このブログを開設しました。
組込み機器やプロプライエタリなソフトを書いているエンジニアの場合はなかなか難しいと思いますが、Web 系の場合、自分で作ったものを簡単に公開することができます。

デザイナの人はよくこういったサイトを持っていますが、Web 系エンジニアの場合もこういったポートフォリオとしてのサイトを持ったほうが転職には有利です。今なら GitHub 辺りでもいいかもしれません。

職務経歴書に書けて面接で話せるサイトがあるというのは、自己アピールしやすくて良かったです。
このブログで言えば、ブロク記事自体はもちろん、右メニューの「自サイト・自作ツール」辺りがアピールポイントになりました。

非 IT 企業であっても、きちんと技術力を持っていこうと考えているような企業であれば、こういった個人のブログも評価の対象にしてくれます。
逆に、通り一遍の評価しかしないような企業は見てくれません。そういったところに転職しても、エンジニアとして生きていくには窮屈に感じてしまいそうです。

そういう意味で、技術系ポートフォリオを持つことは、転職先の企業を評価するためのリトマス紙にもなりますね。

最後に


さて。この記事を 10 年後に読み返した時、果たして何を思うのでしょうか。今から楽しみです。

カテゴリ: Technology Business